- 2015.04.15
- 小さな記事に見つけた幸せ
雨が、あがって、風が吹く。
雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵。
なまあったかい、風が吹く。
中原中也の「春宵感懐」の一節です。
今日は4月15日。
七十二候で言えば第十五候、虹始見(にじはじめてあらわる)の頃です。
菜種梅雨と呼ばれる長い春の雨。
雨上がりに美しい虹が見られるようになるのも、日増しに陽光が強くなるこの頃からでしょうか。
暖かい昼間と違い、打って変ったように肌寒い春の宵。
中也の感性には、今さらながら感慨深いものがあります。
さて、4月に入り、いよいよ新年度となりました。
この時期には毎年新聞に教職員異動の記事が載ります。
その中に偶然彼女の名前を見つけました。それも見覚えのある彼の苗字になって。
その名前を見た瞬間、心の底から小さな喜びが溢れ、ゆっくりと私の心を満たしていきました。
彼女がJMA四日市で成婚したのは1年ほど前。
「結婚と同時に彼の住いの近くに職場の移動願いを出す」と言っていた彼女。
膨大な数の名前の中に彼女の名を見つけた時、それが実現した事を知りました。
新年度ということもあり、社会面や経済面には大きな記事が載っていましたが、それよりもこの小さな記事の小さな活字が、私をこの上なく幸せな気持ちにしてくれたのです。
遠く知らない土地で初めて赴任する不安もあるでしょう。
ましてや近くに友人や知人もいない心細さももちろんあるに違いありません。
しかしそれ以上に、彼に付いていくと決めた彼女の決心に、確かな愛と勇気を見た気がしたのです。
たった一行の新聞記事に記された新しい苗字と新しい居場所。
ともに生き、互いに寄り添い、二人で考える未来。
これからは、そこが二人の居場所であり新天地となるのでしょう。
それを思い、またぞろ静かな喜びに私の胸は満ち溢れていきました。
「きっと幸せになるよ。がんばって」
そう心の中でエールを送った春の宵の出来事でした。